「いくつか質問に答えるだけで、AIがホームページを作ってくれる」—— そんな広告を目にする機会が増えました。 実際に試してみると、たしかに数分で、それらしい見た目のページができあがります。
では、もう制作を頼む必要はないのでしょうか。 結論から言うと、用途によっては本当にAIで十分です。 ただし、作った直後には見えない「あとから困ること」がいくつかあります。 この記事では、業務システムの開発に携わってきた立場から、 作る側の視点でその中身を整理します。
先に結論:AIが得意なのは「最初の1枚」を作るところまで。困りやすいのは、直したいとき・引っ越したいとき・フォームで個人情報を受け取るとき・サービスの仕様が変わったときです。
「AIでホームページを作る」には2つの種類がある
ひとくちに「AIで作る」といっても、実際には性質の違う2つのやり方があります。 どちらを想定しているかで、注意点も変わります。
| 種類 | どういうものか | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| サイト作成サービスのAI機能 | 業種や店名などを入力すると、サービス上にページが自動で組み上がる | そのサービスの中でしか動かない。機能や料金はサービス側の都合で変わる |
| ChatGPTなどにコードを書かせる | AIにHTMLなどのコードを書かせ、自分でサーバーに置いて公開する | 公開・設定・保守をすべて自分で行う。コードの中身を理解していないと直せない |
前者は、Wix・ジンドゥー・ペライチのような 無料・低価格のホームページ作成サービスに AI機能が加わったものと考えると分かりやすいでしょう。 後者は、形の上では「自分でゼロから作る」のと同じです。
AIが得意なこと
たたき台が一瞬でできる
白紙から考えるより、何かしら形があるほうが人は判断しやすくなります。 「この並びは違う」「この写真の大きさは好き」と、 自分の好みがはっきりするのは大きな利点です。
デザインの方向性を比べられる
落ち着いた雰囲気、明るい雰囲気、写真を大きく見せる構成—— 複数の案を短時間で並べて比べられます。 人に頼むと1案ごとに時間がかかる作業なので、ここはAIの強みです。
文章の下書き
紹介文や見出しの案を出すのも得意です。 ただし、事実はAIが知らないため、必ず自分で書き足す必要があります。 この点はホームページの文章をAIで書くコツで詳しく書いています。
AIが苦手なこと
「何を先に見せるか」の判断
ページの見た目は整っても、お客様が最初に知りたいことが上にあるかまでは、 AIは判断してくれません。 飲食店なら営業時間と場所、士業なら相談の流れと費用感、というように、 業種や地域によって「最初に見せるべきもの」は違います。
公開してから見つけてもらうまで
実は、ホームページは作るより公開してからのほうが手間がかかります。 独自ドメインの取得、DNSの設定、Googleサーチコンソールへの登録、 Googleビジネスプロフィールとの情報の統一。 ページを生成するところまではAIが手伝ってくれても、 この一連の設定は、最終的に自分で画面を操作して進めることになります。
Longworksのこのサイトを立ち上げたときも、時間がかかったのはページ作りではなく、 ドメインとサーバーの紐づけ、検索エンジンへの登録、 URLを「www付き」に統一する作業といった、目に見えない部分でした。 どれも一度つまずくと、何が原因なのか調べるだけで時間が溶けていきます。
あとから困る4つのこと
ここからが本題です。作った直後には問題が見えず、 数か月〜数年たってから表に出てくるものを4つ挙げます。
1. 直したいところが直せない
サイト作成サービスの場合、テンプレートの枠を超えた変更はできないことがあります。 「この位置に予約ボタンを置きたい」「スマホでだけ表示を変えたい」といった細かな要望は、 サービスの仕様次第です。
AIにコードを書かせた場合は、逆の問題が起きます。 自由に直せるはずなのに、どこを触ると何が壊れるのか分からない。 システム開発の現場でも、仕様を理解していない人が書いたコードは、 後から直す人にとっていちばん扱いづらいものです。 AIが書いたコードは、書いた本人(AI)に仕様の記憶がないという点で、それに近い状態になります。
2. 引っ越せない
サイト作成サービスで作ったページは、多くの場合、 そのサービスの外に持ち出せません。 別の会社に頼みたくなったとき、デザインや構成を丸ごと移すことは難しく、 作り直しになることがほとんどです。
さらに重要なのがドメインが誰の名義かです。 ドメインさえ自分の名義で持っていれば、サイトを作り直しても、 名刺やチラシに印刷したURLはそのまま使い続けられます。 この考え方は制作会社を乗り換えるときの注意点と共通しています。
3. フォームの安全性に、誰も責任を持っていない
ここはシステム開発の経験から、特にお伝えしたい点です。 お問い合わせフォームや予約フォームは、 お客様の名前・電話番号・メールアドレスといった個人情報を受け取る仕組みです。
AIに書かせたフォームは、たいてい「動き」ます。 しかし「動く」ことと「安全に動く」ことは別です。
- 送信された内容は、どこに保存・転送されているか
- 通信は暗号化(https)されているか
- 機械的な迷惑送信(スパム)への対策はあるか
- 入力欄に不正な文字列を送り込まれたときに、問題が起きない作りか
これらを自分で確認できない場合は、フォーム部分だけでも、 実績のあるフォームサービスを使うか、専門家に見てもらうことをおすすめします。 お問い合わせの受け方そのものについては お問い合わせ導線の設計でも触れています。
4. サービスの仕様や条件が変わる
AI関連のサービスは、機能も提供条件も変化が速い分野です。 始めたときの条件が、数年後も同じとは限りません。 無料の範囲が縮小されたり、使っていた機能が終了したりすれば、 そのたびに対応を迫られます。
これはAIに限らずサービス型すべてに言えることですが、 「自分では管理できない部分」がどこにあるかを把握しておくことが大切です。
AIで作るのが向いている人・向いていない人
| AIで十分なケース | 別の方法を検討したいケース |
|---|---|
| まず形を見てみたい、イメージを固めたい | ホームページから予約・問い合わせを本気で取りたい |
| 名刺代わりの1ページで十分 | 何年も使い続け、少しずつ育てていきたい |
| 自分で画面を触って調べるのが苦にならない | 更新や設定は人に任せて、本業に集中したい |
| 期間限定のイベントや告知ページ | フォームで個人情報を受け取る |
左側に多く当てはまるなら、まずはAIで作ってみるのが合理的です。 右側に当てはまるものがあるなら、少なくともその部分だけは、 仕組みを理解している人の手を借りたほうが安心です。 自作と依頼の比べ方はホームページは自分で作る?依頼する?でも詳しく扱っています。
「AIで作ってから相談する」という順番もある
AIで作ったページは、公開しなかったとしても無駄にはなりません。 むしろ制作を依頼するときの資料として、とても役に立ちます。
「こういう雰囲気で」「この順番で見せたい」を言葉で説明するのは難しいものです。 AIで作ったたたき台があれば、それを見せるだけで伝わります。 打ち合わせの回数が減り、完成までの期間も短くなります。
AIで作ったページを持ち込んでのご相談も歓迎です。「ここは活かして、ここは直したい」という形で進められます。
まとめ
- AIで作れるのは「最初の1枚」。たたき台やイメージ固めには十分使える
- 公開後の設定(ドメイン・検索エンジン登録など)は、結局自分で行う必要がある
- 困りやすいのは、修正・引っ越し・フォームの安全性・サービスの仕様変更
- ドメインは必ず自分の名義で持っておく
- 個人情報を受け取るフォームは、「動く」だけで判断しない
Longworksでは、荒川区・町屋を中心に個人事業主・小規模店舗のホームページ制作を、 公開後の設定や保守まで含めてお手伝いしています。 月額制と買い切りの違いは月額制と買い切りの比較、 費用の目安は料金ページをご覧ください。